江戸の黒豹党

孤独なお爺ちゃんの寂しい日常を覚え書き程度に綴る

ニヤニヤしながらアイスキューブを愛でる映画『ネクスト・ドリーム』

【劇場映画『ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢』雑感】

観ようかどうしようか迷ったけど、トレーラー映像を観たらアイスキューブ兄さんがチラッと出てたのでそれだけネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢』(原題:The High Note)を観てきたでござる。ラッパーとしてのアイスキューブはN.W.A.時代から聴き存じてるでござるが、『ボーイズン・ザ・フッド』以降むしろ俳優としてのアイスキューブのほうが好きでござる。そういえば映画出演は2017年の教師コメディ映画『FIST FIGHT』以来でござるね(日本未公開なうえビデオスルーもされないので北米版BDで観た)。

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一応コメディ映画なのでICE CUBE見てニヤニヤする

例によって直球すぎる邦題タイトルがダサすぎて、「どうせ歌物のサクセスストーリーでツマんないだろうな。とりあえず保険でアイスキューブ出てるからイイヤ」ぐらいの軽い気持ちで観に行ったら、ベテランの悩みを若者が解くという案の定わりと単調なプロットだったけど、主人公の白人女子が往年の全米ヒットチャート曲にやたら詳しい音楽オタクで、特にアレサ・フランクリンなどR&B系の楽曲が好きらしく、なぜか憧れのベテラン黒人女性歌手の付き人をしているという不思議な設定がなかなか興味深かく、付き人のお仕事としてショウビズ業界の裏側を皮肉って見せるような演出もそこそこ面白かった。

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ベテラン歌姫のわがままに付き合わされる付き人

ベテラン歌姫「グレース・デイヴィス」は架空の人物だけど、演じるトレイシー・エリス・ロスはあのソウルミュージック界の大御所ダイアナ・ロスの実娘で、ご本人は歌手ではなく俳優が本業。それにしてもトレイシーさん、これまで日本ではあまり知られていないのでは?と思ってググったら、本国アメリカではコメディ系テレビドラマの出演やテレビショーの司会がほとんどで、映画の出演は今作で10作目と少なく、今回のグレース・デイヴィス役で初めて歌唱にも挑戦したらしい。偉大な母親ダイアナ・ロス的なベテラン歌姫の役を、歌手でもないトレイシーさんが演じること自体コメディだという点が今作の見どころ。むしろダイアナ・ロス本人役ではなく実在しない歌姫の役を演じるフィクション作品だからこそ実現できた、トレイシーさんにとって女優人生のいたずら的な映画かと。

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ダイアナ・ロスのようなグレース・デイヴィス

主人公「マギー」役の白人女優ダコタ・ジョンソンも拙者的にあまり馴染みないのでググったら、なんと俳優ドン・ジョンソンと女優メラニー・グリフィスとのお子さんだそうで、義父として俳優アントニオ・バンデラスにも繋がるとか。親七光スゴイじゃないの。なるほど、それでお母様チョイ役出演していたのでござるね。あと、エンドロール見てから気づいたけど、マギーのお父さん役の俳優ってビル・プルマンだったのね。その昔スペースボール』でローンスター役だった人でござるよ(古い)。

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ドン・ジョンソンの娘と知ってビビった

在り来たり気味なストーリー展開はともかく、全体的にR&Bを主体とした音楽演出と、アイスキューブの出番がわりと多く相変わらずいい味出していたのと、WAVES』でタイラー役を演じた黒人俳優ケルヴィン・ハリソン・Jrが若手R&Bシンガー「デビッド・クリフ」役として出ていたので、全体的にわりとブラックムービー寄りで拙者的に大満足。観に行った日はちょっと嫌なことがあって気分を害していたけど、そんなことを忘れさせてくれたほど愉快で後味も快い映画だったでござるよ。セリフ中に、サム・クックやカーディB、アリアナ・グランデなど実在の著名アーティスト名(※him/her self 出演はない)がちょくちょく出てくるし、洋楽が好き特にR&B系のブラックミュージックが好きなら音楽的な演出や細かい点まで存分に愉しめて、基本的にコメディ映画なので軽い気持ちで笑いながら観るのが吉。拙者はキャピトルレコードのビルが出るたびに笑ってしまったでござる。あと、この映画もコロナ過の影響で本国アメリカでは劇場未公開のネット配信リリースになったらしい。今年はそういうのだけ日本の劇場に降りてくるのでござるな。おわり

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期待の若手黒人俳優ケルヴィン・ハリソン・Jrくん

ちなみに拙者はAL B.SURE!カバー版の「Hotel California」のが好きでござる。

 

【おまけ】

このMVにトレイシーさんが出てる時点で高等なギャグだったことに今さら気づいたでござるよ。


EARFQUAKE

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日本で云えば「徹子の部屋」における黒柳徹子さん的な知名度

 



 

浅草六区で女剣劇全盛時代を築いた浅香光代さん死去

なんてこったい、訃報続きでござる。今度は浅香光代さん すい臓がんで死去 92歳」の報。浅草六区の芸能文化史を語るうえで重要な人物の御一人だっただけに残念無念。浅香師匠は戦後間もなくして舞台劇団浅香光代一座」の座長としてチラリズム女剣劇(※当時十代)で人気を博し、現在の浅草ROX本館辺りに1983年まであった浅草松竹演芸場で主に舞台活動を行い、1950年代に女剣劇四巨星の一人として女剣劇全盛時代を築いた。1979年には裏浅草に「演劇舞踊浅香流」事務所兼稽古場を構え、現在は剣劇俳優のお弟子さんが二代目家元として浅香流を襲名して「新星浅香流」を結成し、日本の殺陣・舞踊芸術を後世に伝えるため演劇舞踊教室を開かれているのでござる。また、浅香師匠は小林旭さんとともに俳優養成所「日本時代劇研究所」の名誉顧問でもあった。ご冥福をお祈りします。

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『フライデー』ディーボ役でおなじみの黒人俳優タイニー・リスター・Jr.死去

またしても訃報でござる。日本のニュースでやらないからアメリカ現地時間で12月11日の報だったらしいのだが、黒人俳優のタイニー・リスター・Jr.(Tommy "Tiny" Lister Jr.)さんが12月10日に亡くなられたらしい。リスターさんは今年の初めに新型コロナに掛かったものの克服し、そしてこの12月にも呼吸困難など再び新型コロナに似た症状が出て衰弱のため仕事(映画の撮影)をキャンセルし、12月9日の時点で連絡が取れず翌10日にカリフルニア州警察が調査したところ自宅で亡くなられていたらしい。さらに2型糖尿病も患ってらっしゃったそうで、詳しい死因は現在調査中とのこと。

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大人のジャイアン「ディーボ」役

我々ブラックムービー(黒人映画)ファンにとってリスターさんといえば、アイスキューブ(ICE CUBE)主演のコメディ映画『フライデー』(1995年)でのイジメっ子「ディーボ」がハマり役だったというイメージが強い。ネットでザッと情報を拾ったところ、一般的な日本人の映画ファンにとってはダークナイト』(2008年)の囚人役『フィフスエレメント』(1997年)のリンドバーグ大統領役、それにアニメ映画『ズートピア』(2016年)のフィニック役の声優で名が知られていたらしい。拙者がリスターさんを初めて意識した映画は『黒豹のバラード(原題:POSSE)』(1993年)のオボボ役『スーパーヒーロー メテオマン(原題:The Meteor Man)』(1993年/ビデオスルー)でのゴールデンロウズの怪力男役が印象的だった。『黒豹のバラード』のオボボは作中で主要メンバーの一人ながら気弱な大男で、『メテオマン』の怪力男は悪のギャング団の暴力担当という二極なキャラクターの演じ分けが印象に残り俳優さんとしての名前を意識し、それ以前にもビバリーヒルズコップ2』(1987年)『トレスパス』(1992年)などでも見たことある俳優さんだったが、そのころはまだあまり意識してなかった。

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左端のオボボ役がリスターさん

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一番背の高い怪力男”ディジット”役がリスターさん

拙者は90年代にブラックムービーにハマり、ここ数年は仕事が多忙気味で趣味の時間を控えていたけど、このコロナ過で時間に余裕ができ、この機会にDVDなどでブラックムービーを70年代辺りから順番に観直してブログかHPに記録していこうと思ったものの、現在は劇場公開作品が洋画不足なのもあって何故か日本の時代劇にハマるという体たらく。それはさておき、リスターさんのハマり役ディーボが出る『フライデー』と続編『NEXT FRIDAY』(2000年/日本未公開)についての詳細はそのうち作品自体をブログで紹介することにして、そもそも『フライデー』シリーズという映画は、とある黒人青年の何気なくもおかしな一日を描いた黒人ならではの日常コメディ。いわゆるディーボは大人のジャイアン的なイジメっこポジションで、暴力を振るって近所の奴らから金品を奪う嫌われ者ながら、作品シリーズ的にはアイコン的な愛されキャラ。みんなに憎まれる厄介者だから主人公に倒されるのでカリスマ的なボスキャラとも。日本では、第一作目の『フライデー』が劇場公開され公開後にVHS/LDも発売したものの近年は日本版DVD/BDは出ておらず、以降の第二作目『NEXT FRIDAY』と第三作目『FRIDAY AFTER NEXT』(2002年)に至っては劇場公開もビデオスルーもされていないので、日本のヒップホップ/ブラックムービーファンにとってはカルトムービー扱いとなっているのが残念でござる。

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『NEXT FRIDAY』で出所脱獄するディーボと新しい舎弟

 また、リスターさんは1989年から1996年までの間、「ゼウス」というリングネームでWWF/WCW所属のプロレスラーとしても活躍していた。大学時代は砲丸投げの全米チャンピオンになったほどで卒業後はNFLニューオリンズブレイカーズ(80年代当時)にテスト入団するも夢破れ俳優の道を選んだらしい。そして、1989年に公開されたハルク・ホーガン主演のプロレス映画『ゴールデンボンバー』出演を機にWWF入りしたらしいでござる。

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リングネーム「ZEUS」としてWWF/WCWでも活躍

いわゆる大柄な怪力男役が多かったリスターさんは多くの映画やテレビに出演する黒人俳優の名バイプレイヤー。個人的にマイケル・クラーク・ダンカン(2012死去)さんと混同した時期もあったけど、また拙者の好きな俳優さんが亡くなられて残念無念。本国サイトで出演作品リストを観るとに日本未公開作品が多いこと多いこと。とりあえず今日は以前LDからダビングした日本語字幕版『フライデー』を観て故人を偲ぶことにするでござるよ。R.I.P. Tommy 'Tiny' Lister Jr.

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「You Can Do It」PVに出演するなどICE CUBEとも仲良し


Ice Cube - You Can Do It (Official Video)

 

楽器漫才の巨星逝く、横山アキラ師匠

今年はコロナの合併症で著名な方も亡くなられ、拙者の好きなご年配の芸能人の誰かが今年で亡くなられやしないかビクビクしていたものの、そんなに訃報がなくて油断していたら小松政夫さんの訃報があって拙者大ショック。ついさっき電線音頭を聞きながら小松政夫さんのブログ記事をアップして、ネットのニュース一覧でエンタメをソートしたら横山ホットブラザーズのリーダー、横山アキラさん死去 88歳」の訃報。切ない週末を迎える。

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在りし日の横山ホットブラザーズ

拙者は楽器漫才が好きで、故トニー谷師匠や故牧伸二師匠なんかが今でも大好きだったりするが、つい先日も台東区中央図書館で新作DVD「台東芸能文庫其の十九 ギター漫談 ペペ桜井」が目に入り、ペペ桜井さんのことは存じないもののギター漫談家ということで気になって借りて観た。DVD映像中のネタ話でペペ桜井さんは「ギター漫談家は私と堺すすむさんの二人しかおらず、つい最近もギター侍なんていましたが数年前に消えた」とおっしゃっていて、そんなに少なかったっけ!? と思い、拙者の知ってる限りでは、まず月亭可朝師匠は2018年に他界、地獄のスナフキン金谷ヒデユキさんは声優に転向寒空はだかさんはエアギター漫談金剛地武志さんはエアギター芸人ダイノジ大地洋輔さんもエアギター芸人南州太郎師匠は懐メロギター漫談なのでギリギリセーフ、吉本新喜劇松浦真也さんはギター芸人ではあるもののギター漫談ではない。ネットで調べたら吉本所属のラニーノーズという若手コンビがギター漫才らしいけど、たしかにギター漫談メインの芸人さんは少ない感じ。楽器漫談にはウクレレ漫談とかピアニカ漫談とかもあるけど。

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御免なさい、ペペ桜井さんは存じませんでした

話は横山ホットブラザーズに戻って、10年ぐらい前までは関東圏のお笑い演芸テレビ番組でも横山ホットブラザーズの姿を見かけたものだが、地元の大阪で主に活動されていることもあり、ここ10年は関東ローカルでは目っきり見かけなくなった。やっぱりお兄さんの横山アキラ師匠の「お~ま~え~は、あ~ほ~か~」ネタが大好きで、HDDレコーダーの録画ワードに横山ホットブラザーズ」と登録したり、おそらく唯一のDVDソフト「平成版 昭和のお笑い名人芸⑨横山ホットブラザーズを買って何度も観たりもした。アキラ師匠、普段はギターだけど、鉄板ネタ「お~ま~え~は、あ~ほ~か~」の際にはミュージックソーという音楽用の大のこぎりを歪ませたり叩いたりして音を出すという希少な漫才スタイルで、弟子とか横山家の跡継ぎは居ないものかと心配していたが、とうとうお終いのようだ。願わくば一度、生で横山ホットブラザーズの公演を観てみたかった。拙者は「♪とかくこの世は朗らかに、笑う門には福来たる、歌う門にも又福来たる、歌って笑ってホットブラザーズ」のフレーズを聞いただけで元気を貰えたものでござった。

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横山ホットブラザーズDVD

我々の世代はやはりテレビのお笑い番組などで満足しちゃって、浅草の演芸場で二~三千円払ってまで生の公演で観たい芸人さんって拙者はなかなか巡り合えてないけど、テレビで観てグッときた芸人さんは生でも観てみたい。落語なんかはテレビでよくやっているほうで、そもそも「浅草お茶の間寄席」というテレビ番組では浅草演芸ホールで公演された落語の興行を毎週放映しているぐらい。しかも何故か千葉テレビの制作で。

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ちばテレの「浅草お茶の間寄席」

どうやら拙者、お笑いは上方方面のが好みらしく、特に横山ホットブラザーズ吉本新喜劇が好きで東京公演があったら観に行きたい。実際、新喜劇は毎年東京公演があるものの、これまでも仕事の都合などでなかなか観に行けてなかった。横山ホットブラザーズはともかく、吉本新喜劇ではやはり松浦真也さんのギター演奏芸が特に好きで、単独公演があれば是非観たい。ギター漫談ではないもののギターの演奏テクニックと演奏ジャンルの幅広さはこれまでにない凄腕。ここ最近のお気に入り芸人さんの一人だ。

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松浦真也&すち子

横山アキラさん亡きあと横山ホットブラザーズの活動はどうなるのかも心配だけど、これを機に横山ホットブラザーズの活動を記録したDVDなどももっとリリースして欲しい。横山ホットブラザーズの偉業は大阪市無形文化財に指定されているものの、上方のお笑い文化を後世に伝えるためにも何かしら形に遺していって欲しいと思う浅草民であった。ちなみに芸能文化に力を入れている我が台東区では、先のペペ桜井さんのDVDのように「台東芸能文庫」シリーズとして区が制作したオリジナルDVDソフトを区内の図書館などで貸し出している。図書館利用の区民は観られるとして、それ以外の人はどうすれば観られるのだろう? 逆に、上方方面でそういった地域住民限定のコンテンツがあったらどうしよう。実は横山ホットブラザーズも地元限定コンテンツがあるのかもしれない。それを考えてると一晩中寝られないの(三球・照代の地下鉄漫才かよ)。おわり

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大阪市無形文化財

 

小松の親分さん、ありがとう

「センキュー、センキュー、本日はにぎにぎしくご来場、誠にありがとう御座居ます。大変、長らくお待たせをいたしました。あたくし、四畳半のザット・エンターテインメント、小松与太八左衛門でございましゅ~、センキュー、センキュー」…これは、1970年代に一大人気となったデンセンマン由来のコミックソングデンセンマンの電線音頭(LPバージョン)」の冒頭で小松政夫さんが扮する司会の小松与太八左衛門による名文句だ。

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デンセンマンありがとう デラックスエディション」として近年CD化されている

デンセンマン自体は1976年放送のバラエティ番組『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』内のコーナーから生まれた人気キャラクターで、漫画家の石ノ森章太郎先生によるキャラクターデザインと変身ヒーロー風のスーツアクターによる滑稽な歌と踊り伊東四朗さんと小松政夫さんら「電線軍団」によるハイテンションな盛り上げ演出などによって当時は日本中のチビッコに絶大な人気を博した。コミックソング「電線音頭」は元々、わらべ歌「あんたがたどこさ」を元に落語家の桂三枝(現・桂文枝)師匠が考案した替え歌ネタで『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』の前番組『ドカンと一発60分!』内で歌われ、桂三枝の電線音頭」としてレコード化もしたが、歌詞が下ネタ寄りで少々大人向けなこともあってかイマイチ人気が振るわなかったようで、今となってはヒット曲「デンセンマンの電線音頭」の元ネタとして当時を知る50代以上の世代とコミックソングマニアには有名なのではないか。

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桂三枝の電線音頭

『ドカンと一発60分!』の頃から伊東四朗さんと小松政夫さんも番組に出演し、シングルレコード桂三枝の電線音頭」のジャケット写真にもお二人の姿が出ており、楽曲内でも「本日はにぎにぎしくご来場、誠にありがとう御座居ます。わちき、四畳半のザット・エンターテインメント、総合司会の小松政夫でございましゅ~」と、LPバージョンのデンセンマンの電線音頭」のように冒頭で小松さんによる司会セリフが入るのだが、この時点ではデンセンマンも電線軍団もまだ無いので「総合司会の小松政夫として出ている。

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ベンジャミン伊藤と小松与太八左衛門

1976年に発売されたシングルレコード版の「デンセンマンの電線音頭」では、小松さんによる司会セリフはなく、冒頭セリフと歌詞の1番を伊東四朗さん扮するキャラクター「ベンジャミン伊東」が歌い、2番を小松政夫さん扮する小松与太八左衛門が歌って、3番ではデンセンマン(声・俳優/声優の堀勝之祐さん)が登場して歌い、4番からスクールメイツのチビッコたちがメインで歌い、5番の歌詞で「一番好きなのはデンセンマン!」と歌って閉めるという歌詞共々チビッコ向けな構成となっている。デンセンマン人気で1977年にはデンセンマンありがとう」というLPレコードアルバムも発売され、LPバージョンの「デンセンマンの電線音頭」「電線音頭 ~全国縦断編~」「デンセンロックなどデンセンマンや番組に関連した楽曲が収録。小松さんはこのLPレコード内でも進行役の司会や楽しいお喋りのほか、何曲か歌を歌ったりもしている。また、『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』番組内のコント劇コーナー「悪ガキ一家と鬼かあちゃんで小松さんは政太郎という生真面目少年役を演じ、伊東さん演じる母ちゃんに怒られたり、キャンディーズの3人が演じるラン助、スー吉、ミキ子らにいじめられたりもするが政太郎は会話がシラケると突然「♪し~らけど~り~、と~んでゆ~く~、南のそ~ら~へ~、ミジメ、ミジメ~」と歌いだし、その歌が番組内で人気が出て「しらけ鳥音頭」としてシングルレコード化されたり、のちに怪鳥しらけ鳥という着ぐるみキャラクターが大々的に登場するまでに発展した。この「♪し~らけど~り~、と~んでゆ~く~、南のそ~ら~へ~、ミジメ、ミジメ~」という冒頭フレーズは、80年代ゲームセンターで一世を風靡したビル登りビデオゲームクレイジー・クライマーのゲーム画面中でプレイヤーを邪魔するコンドルが登場する際にゲーム音のジングルとして流れ、当時「しらけ鳥音頭」はそれほど知名度があったことが伺える。

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小松政夫版しらけ鳥音頭

当時(1970年代後半)チビッコだった現50代以上の世代にとって小松政夫さんと云えば『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』に出てきた政太郎(悪ガキ一家と鬼かあちゃん)や小松与太八左衛門(電線軍団)のイメージが強いのである。キャンディーズが出ていたことも人気の要因の一つであるが『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』はDVD-BOXされている。

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みごろ!たべごろ!笑いごろ! DVD-BOX

2003年には、『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』を元にしたみごろ!たべごろ!ナントカカントカという謎のバラエティ番組日曜日の早朝4時半~という異常な時間帯に放映されていた。拙者は当時、若者だった故に土曜の夜は御前様でそのまま日曜の朝に寝るダメな生活を送っていたので偶然にも初めて観たナントカカントカのインパクトは強烈で、初期のころは番組の冒頭と最後に、呉服姿のご老人に扮した小松政夫さんが屋外ロケで小ネタコントをしていた番組自体の進行は金剛地武志さんが行い、基本的に「ウゴウゴルーガ」のようなシュールなギャグを交えたチビッコ向けの知育番組のようだったが、『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』から「悪ガキ一家と鬼かあちゃんデンセンマンの電線音頭」のコーナーを当時の映像のまま挿入したり、チビッコが麿赤児さんに質問するコーナーがあったり、スナックを舞台に小松さんや金剛地さん、安部譲二さんなどが登場するコント劇「スナック野バラ」のコーナーがあったりして、変な物好きな拙者にとっては日曜の早朝からご褒美であった。つい先日、昔のVHSビデオテープをダビング整理したらみごろ!たべごろ!ナントカカントカ』3回分ほど発掘したので懐かしんで観ていたところだった。

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みごろ!たべごろ!ナントカカントカ

今日、出掛けにスマホの通知画面を見たらニュース速報で「俳優の小松政夫さん死去 78歳」とあって、ショックだった。ショックだったけど、真っ先に頭の中をよぎったのはデンセンマンで司会をする小松さんの姿だった。もちろん小松さんの偉業はこれだけじゃないけど、拙者の心の中にも小松与太八左衛門政太郎小松の親分さんなど小松さんのギャグはずっと生き続けるのであった小松政夫さん、ありがとう。ご冥福をお祈りいたします。

 

ありがとさん、ありがとさん、

貴方のおかげで人生が、酷く楽しくなりました。

(有賀十三「デンセンマンありがとう」より)

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淀川長治さんのモノマネでも有名

 

 

 

【おまけ】

佐竹商店街の公式チャンネルに「あなたの町で電線音頭」ロケの貴重な映像がアップされていたでござる。


昭和52年(1977)佐竹商店街で電線音頭

デンセンマン何処や?と思ったら商店街アーチの上で踊るデンセンマンがアツイ! 

ていうか、佐竹商店街の公式チャンネルなんてあったんや…。(ご近所感)

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日本で2番目に古い商店街にデンセンマン降臨

 

クリス・ロックの動物コメディ映画『魔女がいっぱい』

劇場映画『魔女がいっぱい』雑感

今年はコロナ過の影響で合衆国内の映画館は閉鎖気味。日本の映画館は非常事態宣言明けの6月に復帰したものの、特にハリウッド製の新作洋画タイトルが慢性的に不足していて、今日TOHO日本橋で観てきた『魔女がいっぱい』もなんだか久々に劇場で洋画の新作タイトルを観た気分。拙者が最近劇場で観たのは、日本のアニメ『魔女見習いをさがして』2回で、その前が『トロールズ ミュージック★パワー』『アダムスファミリー』と、一応洋画だけどやっぱりアニメで、さらにその前は9月に観た『テネット』なので、コロナ過の今年は劇場で映画を観る頻度自体も減り、洋画であってもアニメ作品だったりして厳密に言えば実写の洋画新作は『テネット』以来なので久々に感じたのも無理はない。

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魔女がいっぱい

さて、『魔女がいっぱい』の原題は『Roald Dahl's The Witches<ロアルド・ダール’ズ ザ・ウィッチズ>』で、日本版のキャッチコピー「チャーリーとチョコレート工場』原作者が贈る」とあるように、映画の原作となった児童書『チョコレート工場の秘密』(1964年)と同様に作家ロアルド・ダールによる児童書「魔女がいっぱい」(1983年)が原作。1990年にも『ジム・ヘンソンのウィッチズ(字幕版)』『大魔女をやっつけろ!(吹替版)』として一度目の実写映画化がされていたようだ。個人的に90年代はストリート・ギャングスタ系のブラックスプロイテーション映画にハマっていたので1990年映画版『ウィッチズ』は全然存じなかったでござるから、是も日本版ビデオソフトなりを探してそのうち観るでござる(ちなみに拙者は2005年版『チャーリーとチョコレート工場』よりも1971年版『夢のチョコレート工場』のほうが好きでござる)。

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大魔女をやっつけろ!

特に女の子向けの児童書や絵本には魔女がよく出てくるが、今作の魔女はホウキに乗って空を飛ぶ系の生易しい魔女ではなく、正体の容姿が恐ろしい怪物な魔女というチョイファンタジーホラー。個人的に嬉しかったのは、主人公の少年とお祖母ちゃんが黒人で、基本的な生活様式が60年代黒人家庭像だったので序盤の挿入歌にオーティス・レディングの「(Sittin' On) The Dock of the Bay」 やフォートップスの「Reach Out I'll Be There」が流れたり、それにテレビでアイズレー・ブラザーズの「It's Your Thing」の映像が流れたりして、ブラックミュージック好きにはちょっとしたご褒美。何より、冒頭から語り掛ける謎の人物のナレーション声明らかにクリス・ロック(SNL系コメディアンにして有名な黒人俳優)だったので、ブラックムービー好きにとってはお馴染みなオチャラケ声を聞いた途端「この映画、絶対コメディだよね」と、観て早々に面白映画だと期待できた。この時点でブラックムービー好きな方にオススメ。原作の児童書でも黒人なのかは知らんけど。

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お祖母ちゃんと孫の心温まるお話

個人的に大魔女役のアン・ハサウエイにはあまり興味がなく、むしろお祖母ちゃん役の黒人女優オクタビア・スペンサーのほうが馴染みあるので、ストーリー中でおばあちゃんが病気がちなのでいつ死ぬのかずっと心配してしまったほど。今作は児童文学が原作で、今回の実写映画化もメインターゲットはチビッコだと思うので、魔法などのファンタジー要素のCG演出がちょっと安っぽかったりするのはご愛敬で笑って許せるレベル。むしろ、主人公のチビッコらがチュウチュウ🐁になって行動する展開が主だっており、近年のピーターラビットパディントンなどのように動物CGキャラの質感や演出は良かったので、人間語を喋るかわいい動物キャラの映画が好きな方にもおススメできる。チュウチュウ🐁たちのアクションシーンは劇場の大スクリーンで観たほうが迫力あるカメラワーク演出でなかなかスリルがあり楽しめた(一生懸命な🐁を応援する純粋なチビッコの心境で)。事前情報なしでアン・ハサウェイ主演のオサレ映画かと思ったら、実際はクリス・ロックのストーリーテーラーによる動物コメディ映画だったでござる。

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例によって太っちょキャラがいい味出してます。

2005年公開のティム・バートン監督版『チャーリーとチョコレート工場は、児童書原作ながらも当時テレビ放映やレンタル市場も含めて若い世代の一般層に人気があり、日本での興行収益は 53.5億円と、まずまずの成績だったらしい。今回の『魔女といっぱい』は、個人的に黒人映画動物映画児童書原作という好きなジャンルポイントがあったので素直に面白く楽しめ、派手さは無いものの満足のいく無難な作品であったものの、2005年版『チャーリーとチョコレート工場』のような派手なデキを期待して観ると、ちょっと物足りなかったり、期待外れに思われるかもしれない。そもそもチビッコ向けなのでチビッコが見るべきだと思うし、大人だったらある程度の知識のある映画マニアのほうが楽しめるかも。と、ちょっと観る人を選ぶ作品だと思われ。とはいえ、ストーリー自体は難しいことなく、何も考えず気楽に楽しめるので、ソフト化や配信されたら家の大画面テレビで家族団らんで観る家庭用ファミリー向け大正解かもね。そもそも本国ではコロナ過の影響で劇場公開されず配信オンリーのビデオスルー映画になってしまったらしい。おわり

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HBO Maxオリジナル配信映画

黒人映画度      :☆☆☆☆★
60年代ソウル度 :☆☆☆☆★
動物映画度   :☆☆☆☆★
チビッコ向け度 :☆☆☆☆☆
ホラー度    :☆☆☆★★
ファンタジー度 :☆☆★★★
クリス・ロック度:☆☆☆☆★

日本版『逃亡者』の裏で時代劇版“逃亡者”な『上意討ち』が熱かった。【時代劇日記②】

BS-TBS時代劇SP『池波正太郎原作 上意討ち』雑感】

今夜は渡辺謙さん主演の日本版『逃亡者』(前半)の放映を楽しみにしていたけど、テレビ時代劇新作となるBS-TBSで開局20周年記念ドラマ『池波正太郎原作 上意討ち』が19時から放映されるとCMで知って、個人的に時代劇ブーム到来中なので是は何たるご褒美か。

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BS-TBS開局20周年ドラマ『池波正太郎原作 上意討ち』

「上意討ち」と云えば、まず三船敏郎さん主演の映画『上意討ち 拝領妻始末』(1967年)を連想するが、そちらは時代小説家・滝口康彦先生の短編小説「拝領妻始末」(1965年)が原作だそうで、今回のドラマの原作となる池波正太郎先生の時代小説「上意討ち」(1981年)は今作が初の映像化のようだ。また、『上意討ち 拝領妻始末』のほうは原作の「拝領妻始末」よりも、黒沢映画『羅生門』などに携わった脚本家・橋本忍さんが脚色した映画版のシナリオが秀逸だったみたいで、映画シナリオ版を基に1992年と2013年にテレビ時代劇特番でリメイクされたり舞台化されたり、橋本忍さんが自ら改訂した2013年リメイク版のシナリオが小説化されるなど往年の時代劇ファンにとって定番作のようだけど、拙者はまだ時代劇初心者なのでどれも観ておらず、とりあえず次は映画版『上意討ち 拝領妻始末』を観たくなったでござる。

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1967年映画版『上意討ち 拝領妻始末』

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2013年TVドラマ版『上意討ち 拝領妻始末』

さて、本題となる今回のBS-TBSドラマ版『池波正太郎原作 上意討ち』を観た感想としては、コンプライアンス的に面白みが欠け気味な今どきのテレビ時代劇にしてはとても良かったと思います。いや、むしろ4K放送だったこともあり、現代の映像技術でもっとテレビ時代劇の新作を作ればいいのにと思ったほど。W主演の藩士役である永山絢斗さんと尾上松也さんの演技もなかなか良く、バカ殿役の宇梶剛士さんや庄屋さん役の中村梅雀さんらも相変わらずいい味出されてました。製作は松竹ということもあり、殺陣シーンはもちろんのことカメラワークの魅せ方音楽などの演出も良く、池波正太郎先生の作品特有「人情味」俳優さん方の良質な演技によっていい感じに表現されていると思います。

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BS-TBSドラマ版『【池波正太郎原作】上意討ち』

事前告知番組『時代劇「上意討ち」を10倍楽しく観る方法!』より、【上意討ち】とは「主君の命令を受けて罪人を討つこと」らしく、そこで【今作のあらすじ】越前国・鰺岡藩堀家の藩主である堀兵庫頭忠行(バカ殿)は、領内娯楽の一つとしている剣術試合を開き、御前試合の決勝戦で相まみえるほど、一、二の腕前を争う実力を持つふたりの剣豪藩士森十兵衛田中源四郎。ふたりはライバル関係にあり、剣を通じてお互いを認め合い、何度か立ち会ううちに友情が芽生えていた。あるとき、バカ殿が横暴にも源四郎の許嫁・千里を側室に差し出せと命ずるバカ殿のNTR下知に従うしかない千里の父は泣く泣く婚約を解消させ、のちに千里は自害恨みを持った源四郎は、鷹狩り中で一人になったバカ殿を狙って殴打暴行し、脱藩逃亡する。倅の負い目を追って源四郎の父も自害不運続きな源四郎に同情する十兵衛に対して、よりにもよってバカ殿が叛逆行為を食わされた脱藩者である源四郎を探し出して「上意討ち」せよと命ずる。複雑な心境を抱えた十兵衛は源四郎の追手として旅をすることになり、二年の歳月の中、二度ほど源四郎と出くわすものの、己の葛藤のせいか取り逃がす。モタモタしている十兵衛に業を煮やしたバカ殿は、藩から更なる追手を放つ。十兵衛は源四郎との三度目の遭遇で剣を交えるものの、長年の追跡旅で疲れ果てており、決斗のさなか自暴自棄になった十兵衛は橋の欄干から飛び降りて川の流れに身を任せ姿を消してしまう。しばらくして近江国行き倒れていた十兵衛は、偶然通りかかった庄屋の橋本彦八に助けられ、その娘のお妙に献身的な介抱を受ける。彦八に素性を明かした十兵衛は、彦八の提案によりお妙と所帯を持ち、子を設け、庄屋の跡継ぎとして第二の人生を歩むのであった。しかし、そんな十兵衛のことなど知らぬ源四郎は逃走を続けており、ある日ふたりは再び遭遇してしまい、十兵衛と源四郎の運命やいかに? と、番組公式HPのあらすじを時代劇初心者の拙者なりに要約したでござる。

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藩士の嫁を寝取り下知したバカ殿

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友情出演でチョイ役の玉ちゃん

ほかにも女優の高島礼子さんやジャニーズJr.の室龍太さんが出演されてたり、全日本スナック連盟会長の玉袋筋太郎さんがチョイ役で出てたり、ファンの方にとって話題性のある配役ポイントも押さえていて開局20年記念番組としては良いのでは。個人的に、実写ドラマ課長バカ一代を観て以来、主演の課長補佐代理・八神和彦役を務めた若手歌舞伎俳優尾上松也さんのことが気に入り、最近テレビでよく見かけるので注目しています。今作の田中源四郎役も鬼気迫る演技でなかなか良かったので尾上松也さん、またテレビ時代劇に出演して欲しいものですね。BS-TBSさん、時代劇不況の此のご時世に新作テレビ時代劇をありがとう!そして開局20周年おめでとう!おわり

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課長補佐代理・八神和彦

 【追記】

日本版『逃亡者』[完結編]も観たでござるが、偶然だろうけど『上意討ち』と被ってる点があってフイタ