ニヤニヤしながらアイスキューブを愛でる映画『ネクスト・ドリーム』
【劇場映画『ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢』雑感】
観ようかどうしようか迷ったけど、トレーラー映像を観たらアイスキューブ兄さんがチラッと出てたのでそれだけで『ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢』(原題:The High Note)を観てきたでござる。ラッパーとしてのアイスキューブはN.W.A.時代から聴き存じてるでござるが、『ボーイズン・ザ・フッド』以降むしろ俳優としてのアイスキューブのほうが好きでござる。そういえば映画出演は2017年の教師コメディ映画『FIST FIGHT』以来でござるね(日本未公開なうえビデオスルーもされないので北米版BDで観た)。
例によって直球すぎる邦題タイトルがダサすぎて、「どうせ歌物のサクセスストーリーでツマんないだろうな。とりあえず保険でアイスキューブ出てるからイイヤ」ぐらいの軽い気持ちで観に行ったら、ベテランの悩みを若者が解くという案の定わりと単調なプロットだったけど、主人公の白人女子が往年の全米ヒットチャート曲にやたら詳しい音楽オタクで、特にアレサ・フランクリンなどR&B系の楽曲が好きらしく、なぜか憧れのベテラン黒人女性歌手の付き人をしているという不思議な設定がなかなか興味深かく、付き人のお仕事としてショウビズ業界の裏側を皮肉って見せるような演出もそこそこ面白かった。
ベテラン歌姫「グレース・デイヴィス」は架空の人物だけど、演じるトレイシー・エリス・ロスはあのソウルミュージック界の大御所ダイアナ・ロスの実娘で、ご本人は歌手ではなく俳優が本業。それにしてもトレイシーさん、これまで日本ではあまり知られていないのでは?と思ってググったら、本国アメリカではコメディ系テレビドラマの出演やテレビショーの司会がほとんどで、映画の出演は今作で10作目と少なく、今回のグレース・デイヴィス役で初めて歌唱にも挑戦したらしい。偉大な母親ダイアナ・ロス的なベテラン歌姫の役を、歌手でもないトレイシーさんが演じること自体コメディだという点が今作の見どころ。むしろダイアナ・ロス本人役ではなく実在しない歌姫の役を演じるフィクション作品だからこそ実現できた、トレイシーさんにとって女優人生のいたずら的な映画かと。
主人公「マギー」役の白人女優ダコタ・ジョンソンも拙者的にあまり馴染みないのでググったら、なんと俳優ドン・ジョンソンと女優メラニー・グリフィスとのお子さんだそうで、義父として俳優アントニオ・バンデラスにも繋がるとか。親七光スゴイじゃないの。なるほど、それでお母様チョイ役出演していたのでござるね。あと、エンドロール見てから気づいたけど、マギーのお父さん役の俳優ってビル・プルマンだったのね。その昔『スペースボール』でローンスター役だった人でござるよ(古い)。
在り来たり気味なストーリー展開はともかく、全体的にR&Bを主体とした音楽演出と、アイスキューブの出番がわりと多くて相変わらずいい味出していたのと、『WAVES』でタイラー役を演じた黒人俳優ケルヴィン・ハリソン・Jrが若手R&Bシンガー「デビッド・クリフ」役として出ていたので、全体的にわりとブラックムービー寄りで拙者的に大満足。観に行った日はちょっと嫌なことがあって気分を害していたけど、そんなことを忘れさせてくれたほど愉快で後味も快い映画だったでござるよ。セリフ中に、サム・クックやカーディB、アリアナ・グランデなど実在の著名アーティスト名(※him/her self 出演はない)がちょくちょく出てくるし、洋楽が好きで特にR&B系のブラックミュージックが好きなら音楽的な演出や細かい点まで存分に愉しめて、基本的にコメディ映画なので軽い気持ちで笑いながら観るのが吉。拙者はキャピトルレコードのビルが出るたびに笑ってしまったでござる。あと、この映画もコロナ過の影響で本国アメリカでは劇場未公開のネット配信リリースになったらしい。今年はそういうのだけ日本の劇場に降りてくるのでござるな。おわり
ちなみに拙者はAL B.SURE!カバー版の「Hotel California」のが好きでござる。
【おまけ】
このMVにトレイシーさんが出てる時点で高等なギャグだったことに今さら気づいたでござるよ。