江戸の黒豹党

孤独なお爺ちゃんの寂しい日常を覚え書き程度に綴る

浅草を斬る。その12.5【花家さん閉店】

ほぼ毎日エンコへ出掛けてるけど、田原町方面は自転車で通ったり通らなかったりするので今さら気付いたのですが、浅草近辺でも老舗の焼きそば屋・花家さんが5月30日をもって閉店されていたようで吃驚!お店の前に「76年間ありがとうございました」と大きく書かれた閉店告知が貼られていました。f:id:usaponthe3rd:20210605205258j:image

拙者は元々焼きそばが大好きで、焼きそばに関する話題にはわりと敏感なほう。ひと昔前からインスタントのカップ焼きそばで「浅草焼きそば」なる商品がずっと出ていたりするけど、浅草界隈で有名な焼きそば屋さんってドコ?ってなると、大抵は浅草地下街の福ちゃんさんか田原町の花家さんが名高い。だいぶん前に、この2店を含め浅草焼きそばの銘店を探すべくあちこち食べ歩いたことがあったけど、ぶっちゃけ関西風焼きそばと比べるとどこもチープな焼きそばが殆どで、基本的に肉類が入っていないお店が多かった。豚肉の代わりに魚肉ソーセージやハムを使っているお店もあった。いろいろ食べ歩いて気付いたことは、福ちゃんさんのように浅草界隈の居酒屋には一品料理メニューとして大抵焼きそばがあるという。もんじゃ焼きお好み焼きの鉄板焼メインのお店だと豚玉なりのメニューがあるので少なからず肉が入っているけど、居酒屋メニュー系の焼きそばには肉が入っていない率が高い。そして、これが下町の味、浅草焼きそば本来のスタイルなのではないかと。

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花家さんは長い年月の間、営業されていたので浅草観光スポットのレトロ感ある老舗のお店として有名だったと思うけど、グルメサイトなどネットの食レポを読むとあまり評判が良くなかったりした。それもそのはず、かのチープな肉なし焼きそばの代名詞のような焼きそばだったので、浅草の有名店だと思ってあまり期待しすぎるとガッカリする。しかも、お店の大将のオヤジさんも女将さんもネイティブの江戸っ子気質なので多少は口が荒く、勝手に店内を撮影する若い客がうるさく言われるのも無理がない。チープさを含め元来、東京の下町とはそういうものだと納得して楽しむのが正解なお店だったと思う。今どきの浅草の有名店は観光客に忖度しすぎで、その分サービス料として飲食代に乗っけてる感があるので、地元民はそういうお店は避けている。花家さんのように、少々ぶっきらぼうで味がチープでも庶民価格で長年続いていた店こそが下町庶民の店だったのではないかと思う。花家さんは1945年の創業だったそうで、閉店理由は記載されていないものの、おそらくまたコロナ禍の影響で浅草の老舗のお店をひとつ失ってしまったと思うととても切ない。

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花家さんにお店のシャッターは閉じたままだけど、閉店告知の貼り紙の周りには日に日にお客さんからの感謝のメッセージが貼られていた。中には「おもしろいおばちゃんとやさしいおじちゃんがだいすきでした  ごちそうさまでした」とクレヨンで書かれた4歳のチビッコからの感謝のお手紙が貼られていて涙を誘いつつホッコリする。これは拙者も似たような経験があるからよくわかるでござるが、現実社会での下町人情や人の温かみはインターネット上では伝えることができず、実際にお店などで人とふれあい、経験した者だけが感じ取ることができる。なので決してネットの評判だけが全てではないし、ネットなんかでは伝わらない下町人情が色濃く残る老舗のお店だったと思うと余計に惜しい。拙者もチープな焼きそばだとわかっていたのであまり食べに行かなかったけど、いつか浅草界隈の焼きそば文化についてお話を訊きながら食べに行きたいと思っていたので、その機会を失って残念無念。やはり、好きなお店は足しげく通って買い支えるしか。まだまだ先の見えないコロナ禍だけど、それぐらいしかできないのがもどかしいでござるなぁ。おわり

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【7/17追記】

たまたま昨晩ちょうど写真を撮ったのですが、7月16日の時点で感謝のメッセージはご覧の通りかなり増えていました。でも、花家さんに何か動きがあるのか本日17日には全て剥がされていました。

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